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私は30代のときに何の知識もなく、ただマイホームが欲しいという理由で、当時の住宅都市整備公団の公募する分譲地に申し込んだところ、望外にも倍率100倍に当選してしまいました。資金のことも考えず、当たってしまい、戸惑いながらも、この運を失いたくないと思い、その地に家を建てました。

しかし、その場所は、思いの外交通量が多く、24時間車の騒音に悩まされ、苦しみました。騒音だけでなく、自分自身の愚かさに苦しみました。何度も自分の犯した過ちだと割り切り、一生をこの地で迎えようとも思いましたが、決断すればするだけ、残りの何十年の人生を騒音に苦しみながら暮らしたくないという気持ちも涌いて、悩み苦しみました。

そんなときです。春の陽気に誘われ、市内でも一番の山の手に隣接した公園に遊びに出かけました。その地は、中心部から近いにもかかわらず、幹線道路とは隔絶された陸の孤島のような設計になっており、ここが都心かと思うほど、閑静な空間でした。公園を散策しているうちに何気なくその団地に入り込んでしまい、驚いたことには、まだ最後の分譲地が残っていました。

 

人生にもう一度チャンスをと思い、妻に懇願し、許してもらい、分譲している不動産会社に相談に行きました。

その担当者は、女性の方で、開口一番この分譲地は、最後の分譲地で、まだ、売りに出していませんが、どこが気に入りましたかと親身になって話を聞いてくれました。私はこれまでの経過を話し、この地を終の棲家としたいととうとうと訴えました。そのときです。私をどこかでお見かけしたことがあると言ってくれました。

本当に偶然ですが、その方のお子さんと私の娘は同じ保育所に入れていたことがわかりました。それも同じ組でした。預ける時間帯が違うので、親同士が遭うことはほとんどなかったのです。

ここからは、とんとん拍子で話が進みました。どうやらこの地は、上得意様に優先的に販売する予定だったそうですが、直接社長と掛け合ってくれ、しかも、売値よりも400万円も安くしてくれたのです。

 

世の中はどこかで繋がっていることをつくづく感じ入りました。また、人に会ったらしっかりあいさつし、偶然の出会いを大切にしておくと、このような結果を迎えることもあることを体験しました。
この方のおかげで、今は騒音にも悩まされることもなく、快適な毎日を過ごしています。